骨粗鬆症は生活習慣病の1つ。骨折予防が第一

健康と生活習慣

骨粗鬆症は単なる骨の老化現象ではありません

 
急速な高齢化に伴い、日本人の骨粗鬆症の患者数は年々増加傾向にあり、少なくとも1,000万人以上が罹患していると推定されている。そしてその8割近くが女性です。
 
【骨粗鬆症の有病率】
一般住民での40歳以上の骨粗鬆症の有病率(図)

・腰痛 L2~L4 …
  男性 3.4%( 80万人)  
  女性19.2%(560万人)

 
・大腿骨頚部   …
  男性12.4%(260万人)  
  女性26.5%(810万人)

 
 
・腰椎か大腿骨頚部のいずれかで骨粗鬆症と判断されたものを骨粗鬆症あり判断した場合 … 患者数1,280万人(男性 300万人、女性980万人)
 
※( )内人数は、骨粗鬆症の年代別有病率を2005年の年齢別人工構成に当てはめて推定したものです。
 
この病気は、骨折が起こって初めて症状が出てくるため、疾患に気が付いていない人も多く、治療をしていない人も多いのが現実です。

骨粗鬆症は高齢者に多い疾病であるとの印象が強いですが、若い人が発症することもあります。特に閉経後の女性は罹患の可能性が高くなります。(別記)
 

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骨粗鬆症は予防及び治療が必要な、明らかな疾病です

 
「骨粗鬆症は骨折危険性が増大した状態である」
 
骨の強度が低下し、骨折の原因ともなる「骨粗鬆症」(こつそしょうしょう)は単なる「骨の老化現象」ではありません。「病的老化」で、明らかな「疾患」(病気)です。
骨の量が減ることで、骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。
 
※加齢に伴う骨芽細胞機能低下(下記)はもちろんあります。
 
骨粗鬆症による骨折は骨が脆くなるために起こる合併症(骨折のリスクが極めて高いということ)で、予防及び治療が必要とされるものです。
 
「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」(WHO…世界保健機関)
 
 

骨も新陳代謝を繰り返している

 
「骨」は髪や皮膚と同じように新陳代謝を繰り返し、溶けては作られ、溶けては作られを繰り返しています。(骨の「リモデリング」=再構築と呼ばれる)
 
これにより、血液中のカルシウムの調節を行うとともに、古くなった壊れやすい骨を新しくし、その強度を保っています。
この骨の作り替えを行っているのが「破骨細胞」(古い骨を溶かす)」と「骨芽細胞」(新しい骨を作る)」になります。健康な成人では、このバランス(骨量)が取れていて、骨は溶かされた分だけ生成され、新しくなります。
 
しかし、バランスが崩れ、骨量が次第に減少していくことで、骨の密度が薄くなり、ちょっとしたことで骨折しやすい状態になってしまいます。この状態が「骨粗鬆症」になります。 
 

骨強度=骨密度 + 骨質

 
「骨粗鬆症は骨密度の低下と骨質の劣化により骨強度が低下する疾患である」
 
骨密度は、少年期から思春期にかけて高まり、最大骨量を迎えるが、成人期以降、加齢や閉経に伴い、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回り骨密度は低下します。(上記)
 
骨質は、骨の素材としての質である材質特性と、その素材を元に作り上げられた構造特性(微細構造)に規定されます。
 
エストロゲン(女性ホルモンの1つ)欠乏や加齢に伴い骨吸収が高まり、骨密度が低下し、骨の微細構造が破綻する。
 
また、生活習慣病にって酸化ストレス(活性酸素の害)が増大し、骨吸収(骨が溶ける)の高まりを助長する。
 
酸化ストレスは、骨質にも悪影響をもたらす。
 
骨質の良し悪しは、骨の新陳代謝である骨リモデリングや、細胞機能(細胞の増殖、修復、代謝、細胞間の情報交換等)の良し悪し、基質周囲の環境(酸化や糖化のレベル)ビタミンDやビタミンKの充足状態によって制御されている。
 
骨密度と骨質のどちらが低下していても骨強度は低下し、骨折リスクは高まる。
 
(重要)
骨粗鬆症の患者の状態は多様であるため、骨密度の低下や骨質の劣化は一様ではない。つまり、様々な要因によってもたらされるため、個々の症例ごとにきめ細やかな骨折リスクの評価が必要とされています。
 
 

骨粗鬆症の原因

 
骨粗鬆症の原因、即ち骨強度の低下には、先天的なものや、女性の閉経に伴う性ホルモンなどの内分泌代謝の異常、栄養や生活様式といった環境的要因、あるいは特定の疾患や薬物治療などに伴う二次性骨粗鬆症の発症など様々です。
 
ここでは、概要3つに分けて取り上げます。
 
(1)閉経後の女性に多い
 
女性は閉経を機に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減少します。
エストロゲンは破骨細胞の働きを抑えているのですが、これが減ってしまうことで骨は一気に溶けだします。これに対して骨の形成が追いつかず、骨の量が減ってしまうのです。
 
日本人女性の場合、生涯に30%くらい骨量が減ることが分かっています。
 
(2)カルシウムの欠乏
 
骨に必要な栄養素の不足は、骨密度や骨質の低下をもたらします。
特に骨密度を構成するカルシウムの欠乏は「骨粗鬆症」の原因となります。
 
実は、カルシウム不足の要因のひとつとして、是非とも心に留め置いて置きたいのが、間違ったダイエット法です。
 
カロリー制限をするだけでなく、カルシウム摂取量が低いと、これはもはや不健康食です。特に、骨が成長する10~20歳代のダイエットは、最大骨量が低くなり、閉経後の骨粗鬆症を起こしやすくなります。
 
また、齢をとると腸でのカルシウム吸収が悪くなり、カルシウム不足になりがちです。(加齢)

更に、美白を意識するあまり、紫外線をほとんどカットすると、腸のカルシウム吸収を促進しているビタミンDの産生量が減り、カルシウム不足に輪をかけます。
日光に当たることに過度に敏感になることで、カルシウムが欠乏し、骨粗鬆症になりやすくなるのです。
 
(3)その他
 
運動不足…
 
運動をすることで骨に適度な負荷がかかり、骨芽細胞が活性化します。運動不足の状態が続くと、筋力もそうですが、骨も弱くなってしまいます。(破骨細胞による骨吸収が促進されるということです)
 
痩せ過ぎ…
 
間違ったダイエット法による痩せ過ぎの人同様に、全体的に栄養が不足しています。体脂肪率の低さよりも、カルシウム不足が懸念されます。
 
生活習慣病…
 
糖尿病
リウマチ
慢性腎臓病
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 
これらの疾病のある人も、骨質が劣化することで骨粗鬆症になりやすいことが明らかになっています。
 
COPDと喫煙と骨粗鬆症
 
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。(引用:「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」一般社団法人 日本呼吸器学会)
 
COPDは骨を弱くする様々な要因があるため、骨粗しょう症はCOPDの重大な合併症のひとつと考えられています。
 
喫煙は全身の血流を悪くし、胃腸の働きを抑え、食欲をなくし、カルシウムの吸収を妨げます。女性では骨から血液中へのカルシウムの流出を防ぐ女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を妨げます。そのため喫煙の習慣のある女性は、骨粗鬆症になりやすいといえます。
 
現在の喫煙者は非喫煙者に比べて骨折のリスクは1.26倍、大腿骨近位部骨折のリスクは1.84倍とされています。
 
飲酒と骨粗鬆症
 
過度の飲酒も骨粗鬆症の危険因子です。
アルコールを多量に摂取すと腸管でのカルシウム吸収抑制作用と尿中への排泄促進作用により骨粗鬆症のリスクが高まります。
1日3単位(エタノール24~30g)以上のアルコール摂取は骨粗鬆症性骨折のリスクを1.38倍、大腿骨近位部骨折のリスクを1.68倍に高め、このリスクはアルコールの摂取量に依存して上昇します。
 

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骨粗鬆症は他の疾患の要因にもなる

 
骨粗鬆症は、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患であると定義されているように、最も気をつけなければならないのが骨折です。
 
骨密度が低下すると骨強度も低下しますので、転倒や不注意に荷重を掛けることで大腿骨近位部(太ももの付け根)や脊椎が折れてしまうことが多くあります。
大腿骨が折れると、手術しない限り歩行困難になり、寝たきりになってしまいます。
 

また、背骨を構成する脊椎が弱くなると圧迫骨折を起こします。脊椎の圧迫骨折は、すぐには気づかないことも多く、実は次々と連鎖して骨折することがあります。気が付くと身長が異常に縮んでいたといたといったことも見られます。
 
背中や腰の痛みだけではありません。骨折により肺や胃などの内臓も圧迫されますので、呼吸系や胃腸系の疾患を併発する要因にもなります。
 
圧迫骨折による身長短縮は修復不可能であり、合併症である胃腸障害などもまた一生続くことになります。
 
骨折の予防が何より大事です。
 
 

骨粗鬆症の診断と治療 第一の目的は骨折予防

 

骨粗鬆症診断の基本

 
診断の基本は「骨密度」「骨代謝マーカー」を調べることです。
加えて、問診(病歴の聴取)や身体診察、画像診断(レントゲン等)で、現在や過去に骨折をしていないかどうが検査します。
 
骨密度の測定方法
 
様々な骨密度の測定方法がある中で、2種類のエックス線を使う「DXA法」で腰椎や大腿骨頚部の測定を行うことが、最も正確だと言われています。(大腿骨近位部骨密度は、あらゆる骨折の予知能に優れている)
 
正確な「骨密度」を測ることで、治療の効果も判定することができます。
 
【DXA法:dual-energy X-ray absorptiometry 二重エネルギーX線吸収測定法】
 
 
骨代謝マーカー
 
尿や血液の検査で骨の代謝異常を調べるのが「骨代謝マーカー」です。
骨が過剰に溶けていないか、骨を形成する能力はどうかなどを調べます。
 
また、治療で使用する薬剤の決定、その薬剤の効果の判定などにも用いられます。
 

治療で最も大切なのは骨折の予防

 
骨粗鬆症の治療は骨折の予防が目的であり、中でもADL(英:activities of daily living:日常生活動作)やQOL(英: quality of life:生活の質)の低下を引き起こすと同時に、死亡リスクの増大にもつながる大腿骨近位部骨折、椎体(背骨)骨折の予防がその中心に位置づけられます。
 
とにかく、骨折の発生がその後の新たな骨折発生の危険因子となるため、最初の骨折の予防が重要です。
 
骨粗鬆症によって増大した骨折リスクを低下させ健全な骨格を維持するという目的の達成には薬物療法が中心となります。
 
もちろん、栄養、運動などを含め、骨強度を維持・増大させる生活習慣を確立するとともに、さらに転倒など骨折危険因子を回避する生活習慣を身につけることも必要です。
 

薬物療法で痛みを軽減

 
以下、主な薬物療法になります。
 
①ビスホスホネート製剤
 
破骨細胞の働きを抑え、骨の代謝を調整します。
3年間で7~10%くらい骨量が増える薬です。
結果として、骨折の発生は無治療の場合の半分程度になります。
 
毎日ではなく、週に1回や月に1回の服用で済む製剤もあります。
 
※ビスホスホネート系薬剤を内服している患者に発生する合併症の一つに、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死 (BRONJ:Bisphosphonate-Related OsteoNecrosis of the Jaw)という疾患があります。
 
ビスホスホネートを服用する場合は、使用前に歯科で衛生状態を良くしてから治療を受けるのが良いでしょう。
 
※顎骨壊死(がっこつえし):顎(あご)の骨が腐ってしまう病気です。
 
 
②ヒト型モノクローナル抗体製剤
 
「デノスマブ」という分子標的治療薬のこと。破骨細胞の分化や活性化に必須なRANKLという蛋白に結合して破骨細胞の文化を抑制し、骨の崩壊を防ぐ助けをする。
 
比較的重症の方に使われます。
半年に1回、注射すればよいので、通院の負担が軽減できます。
 
骨量の増加効果や骨折予防効果も現在の薬物の中では高い方になる。
 
歯の状態を良くしてから使用しましょう。
 
 
③女性ホルモン補充療法
 
エストロゲン製剤を使って、女性ホルモンを補充する治療法。
破骨細胞を作るのを抑制し、骨量を増やす。
 
※乳がんなどにあんる危険性が高くなるといった副作用の報告もあり、近年は余り使用されなくなっています。
 
現在は、骨のエストロゲン受容体だけに作用する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)という薬が使用されるようになっています。骨の量は3%ほど増えます。
 
※背骨の骨折を予防できますが、大腿骨骨折の予防効果は少ないといわれています。
 
 
④副甲状腺ホルモン剤(テラパラチド製剤)
 
骨を作る作用を促進して、骨を強くする薬で、このような作用の薬はこの薬のみ。
 
自分で1日1回注射するタイプと、通院して1週間に1回注射するタイプがある。
 
使用することで、骨折をほとんど抑制することができますが、他の薬に比べて費用が非常に割高となっています。
また2年間程度しか使用できませんので、骨折の危険性が高い人や骨折したばかりの人に用いられます。
 
 

骨粗鬆症は生活習慣病の1つ

 

(図:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要から)

 
近年、日本人のカルシウム摂取量は減少傾向にあります。
摂取量の年次推移表を見ると、2001年の総平均が550mgであったのが、その後上回ることなく減少し、2015年で517mgという摂取量で、必要量に対して、極めて低い数字となっています。
 
表:厚生労働省
カルシウム摂取量の平均値・標準偏差の年次推移(1人1日当たり) 単位:mg

2001年

2002年

2003年

2004年

2005年

550

546

543

538

546

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

540

531

511

512

510

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

507

499

504

497

517

※男女・全ての年齢をあわせた平均値のみを抜粋
 
加えて、高齢化の進展とともに、骨粗鬆症の患者数はさらに増えることが予想されます。治療を受けずにいる人も多く、結果としてQOL(生活の質)が低下している人も少なくありません。
 
骨粗鬆症は決して軽視すべきではありません。しっかりと受診することで骨折を防ぐことが大事です。
 

バランスの良い食事と運動を

 
骨粗鬆症も生活習慣病の1つといえます。病状が現れてからの食事療法や運動療法では劇的な変化は望めません。
また、カルシウム不足は、短期間、サプリメントを飲んでも解消されません
 
日頃から転倒予防のための適度な運動、栄養バランスの取れた食生活を送ることが大事です。
 
(気になる方は一度、骨密度検査を受けることをお勧めします)
 
 
<引用・参考資料>
厚生労働省 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版
厚生労働省 カルシウム摂取量の平均値・標準偏差の年次推移(性・年齢階級別(1995-2015)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要


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